2019年活動報告  

11月29日:政府交渉
場所:防衛省、環境省、外務省(東京)


11月29日に防衛省、環境省、外務省交渉を持ちました。
4月、11月と年2回政府交渉を持っています。
11月は政府交渉と署名「沖縄ジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナを守ろう」を
7123筆を安倍内閣(環境省)に提出しました。3年間で提出数は26505筆になりました。
来年も署名は継続します。


9月24日から26日、鳥羽水族館でIUCN海牛目研究家のワークショップが開かれました。
今年の春、私たちはジュゴンBの死やAとCの行方不明について、IUCNの「種の保存委員会」に国際機関としての対応を求めました。

その要請を受けて、IUCN種の保存委員会、「ジュゴンの覚え書き」(ボン条約)、海洋ほ乳類などの専門家、鳥羽水族館メンバー、
SDCCを含むNGOが参加しました。
しかし、環境省はオブザーバーとして参加、
沖縄県環境部は資料提供に止まるなど消極的な姿勢でした(11月1日沖縄県交渉の報告を参照)。

ワークショップでは、沖縄ジュゴンの現状について広域的調査の実施や地域住民の協力と教育活動などについて議論が行われ、
近々IUCN「種の保存委員会」から正式に提案書が発表される段取りになっています。

これらの動きの具体化を求めて、今回の政府交渉を持ちました。
防衛省、環境省がIUCNの来日とワークショップに大きな影響を受けていることが明らかになりました。



(防衛省)
1.ジュゴンA、Cの行方不明について調査範囲を沖縄島本島、古宇利島周辺に広げることを確認しました(22回委員会資料6より。11月12日)。

21回環境監視等委員会(9月9日)では委員から「行方不明のジュゴン調査を最大限に広げるべき」とする意見に、
事務局の沖縄防衛局と委員会委員長は「事業目的ではない」と却下していたにもかかわらずにです(21回委員会議事録p25
)。
IUCNの来日とワークショップが環境監視等委員や防衛省に影響を与えたことは明らかです。
しかし、調査範囲を「環境アセスの範囲に限定した」としていますが、
「他の海域でジュゴンが発見されたときは、ジュゴンA、Cの識別のデーターを持っている防衛省が協力する」とも発言しています(21回委員会)。
今後の闘いで、行方不明ジュゴンの調査範囲を広げることができます。

2.軟弱地盤対策のための設計変更申請について「沖縄県と事前協議する」と国会答弁しています。
事前協議は処分庁の沖縄県の指導に従うことが前提ですが、
防衛省は「まだ協議していないから従うかどうか分からない」と従わないことを言外にほのめかしています。
さらに、国会での追及が必要です。

3.9月に防衛省が発足させた「技術検討会」で検討した内容にもとづいて、
「自然環境への影響を環境監視等委員会で議論すること」を委員から求められていました(21回委員会)。
この点については環境監視等委員会で議論することを認めましたが、
環境省には「必要に応じて意見を求める」と消極的な姿勢でした。

4.前回の4月交渉で、ジュゴンの出す音と工事船舶の出す音の調査比較を求めましたが、
「調査していない」としました。工事船舶の出す音がジュゴンの交信を妨害したことが行方不明の原因のひとつかもしれません。
今後も追及します。


(環境省)
ワークショップに参加していた野生生物課の課長補佐が出席しました。
環境省は「ワークショップにはにはオブザーバー参加」と消極的な姿勢でした。
しかし、「沖縄ジュゴンが8番目の絶滅ほ乳類になる恐れがある」とのIUCNの厳しい評価に、
「迅速な」対応を明らかにしました。

1.沖縄ジュゴンの調査として、「今年度予算で渡名喜、波照間、西表島でのジュゴン食み跡調査をする。
来年1月〜3月に西表島の住民とジュゴンについての勉強会をする」など情報収集に努めると回答しました。
しかし、ジュゴンAの行方不明調査や状況について環境省のホームページで呼びかけることには消極的でした。

2.軟弱地盤対策が大浦湾の環境に与える影響について「事業者が適切に対応すると思う」の一点張りでした。
このような姿勢では2020世界自然遺産登録の実現はおぼつかないと環境省を厳しく批判しました。


(外務省)
IUCN海牛目研究家の来日については環境省から情報が入っていましたが、
ワークショップの具体的な内容は伝えられていませんでした。

1.日米両政府の合意文書「世界自然遺産への推薦について」(推薦書付属資料p1183)が
国際協定の体裁をとっていないことについては、「推薦書の一部ということで、国際協定である」と繰り返し強調しました。
合意文書自体は評価できるので、今後、この合意文書を運動で活用していきます。

2.2020国防権限法案が日米関係にもたらす影響については、
「2+2での議論が日米間の方針です」と、米国政府の後ろから歩く外交姿勢を強調しました。

ジュゴンBの死を受けて開催されたIUCNワークショップと提案を、
米国ジュゴン訴訟控訴審の公開審理の実現に生かしたいと思っています。
そして、近々に発表されるIUCNからの提案をジュゴン保護に生かす運動に結び付けたいと思っています。

  ジュゴンの保護者より。